バネ知識 あれこれ(バネの種類)
バネの種類
形状別に分類すると以下のようになります。
コイルバネ
細長い線状の材料を螺旋(らせん)状に巻いたバネ。様々な種類のバネの中で最も一般的な形状(最も有名な種類)のものです。受ける荷重の種類によって、さらに「圧縮コイルバネ」「引張コイルバネ」「トーションスプリング」といった種類に分けられます。(後述参照)
コイルバネには左巻と右巻とがあり更に旋盤式(手動式)と自動機式とがあります。巻方向は、特に必要がない場合は右巻きとし、端末を
起点として(出力側より)時計針回転方向に巻かれているものを右巻きといいます。
数多くあるバネのうち、最も多く用いられています。その理由は、形状が比較的単純であり、大量生産が可能なため、価格が安価にできるためです。さらにエネルギー蓄積の効率が良いために、コンパクトに設計できるのも理由のひとつです。
コイルバネの使用例はクッションとしての役割が多いです。コイルの部分には、さまざまな形状があり、円錐や円筒・樽形などがあります。一般的な円筒形のコイルバネは、コイル径とピッチが一定です。また、鋼材を切削加工することで、高精度な動作が可能なバネを製造することが可能です。
圧縮コイルバネ (圧縮バネ 押しバネ)
コイルバネの内、圧縮の荷重を受けて用いられるバネです。バネの中でも最も広く使用されている種類です。使用目的によって種々の形状のものがあり、円筒状のコイルバネが最も一般的だが、円錐状や樽形に巻いたものなど様々な種類があります。コイル状にする素線自体には、
主にねじりモーメントが加わり、素線がねじり変形を起こすことで、バネが全体として伸び縮みします。バネが変形するときの単位体積当たりの弾性エネルギー(エネルギー吸収効率)は他のバネ部品と比較して大きく、取り付けに必要な空間は比較的小さくて済みます。
圧縮コイルバネ(押しバネ)は、各種様々な規格があり、材料やコイル径、ピッチを変えることで、様々な用途に応用できますので、機械の往復運動や押し出し部分などにも良く使用されています。精密機械の小さな形状から、バイクのサスペンションなど大きな物まで、多種多様に使われています。
バネの端部は、用途、製造方法等により、種々の形状のものがあり、一般的に熱間成形バネは、クローズドエンド(テーパ)が、
冷間成形バネにはクローズドエンド(研削)が用いられることが多いです。これは、バネが取りつけられた時の安定性をよくするためです。
引張コイルバネ(引張バネ 引きバネ)
圧縮コイルバネとは逆に、引張荷重を受ける用途に用いられるバネです。圧縮コイルバネに次いで広く用いられているバネです。
圧縮コイルバネと同じく、素線自体は主にねじり変形を起こし、全体が伸びます。一般的な引張りコイルバネは、外部から荷重がかかって
いない状態でもコイル同士が密着しており、この状態でもコイル同士が密着しようとする力が働いています。(初張力)
コイルの端には、フックが存在しフック形状には用途に合わせて様々な形状があります。特殊な例としては、フックにかわって金具を
取りつける場合もあります。フックの形状は、取りつけられる相手部品等に合わせて決められるが、かなり小さなRで曲げ加工される場合が
多いので、応力集中による破損が考えられ注意を要します。
引張コイルバネ(引張バネ 引きバネ)は、自転車のスタンドや自動車部品にも多く使われ、用途がとても幅広いバネです。
また、フックの形状を工夫することで様々な環境に適応させることができます。
トーションスプリング(ねじりコイルバネ)
トーションスプリング(ねじりコイルバネ)は、コイル中心軸まわりに、ねじりモーメントを受けるコイルバネです。巻き込まれた力を開放
しようとする動力をいかしたバネをいいます。コイルの端に荷重を受ける腕を持ち、コイルを巻き込んだり巻き戻したりする方向に変形
させます。端部分形状は使用方法によって種々のものがあります。バネの素線自体には曲げ応力が加わり、荷重による弾性エネルギーは
曲げ弾性エネルギーとして蓄えられます。部品を回転運動をさせる箇所などで用いられています。一般的には、密着巻ですが用途によっては
ピッチがあるものもあります。
また、このねじりコイルバネを左右に2個を組み合わせる(ダブルトーションバネ)ことで、コイル部分が同時に働き1個と同じねじり角度でも約2倍の力を得ることも可能です。精密機械は勿論、一般的なポストの開閉部分や、ゲーム機器にも多く利用されています。
板バネ
バネ材に板材を用いたバネの総称です。板の曲げ変形を利用してバネとして使用します。たわみが小さい範囲であれば、はりの曲げ理論を
そのまま使って変形などが計算ができます。コイルバネと比較して、材料利用効率が悪いです。「重ね板バネ」「薄板バネ」といった種類に
分けられます。跳び箱で使う踏板も、板バネの一種になります。
板バネは、圧縮機の弁やトラックや鉄道車両の懸架装置、自動車のホースクランプやパソコン、プリンタなどにも用いられています。
また、製造加工が簡単であることも、板バネのメリットです。
重ね板バネ
複数の板材を重ねた板バネです。中央を分厚くするように板を重ねることで、バネ内に発生する曲げ応力の均一化を図っています。
板材同士が接触して摩擦することで振動の減衰に寄与します。(高い衝撃の吸収能力)
一方で、板間の摩擦が固有振動数を高くし、実際の車両においては乗り心地に悪影響することもあります。取り付け方法が簡単で、
自動車や鉄道車両の懸架装置用に使われるのがほとんどです。
薄板バネ
板バネの内、薄い板材を用いたバネの総称です。形状は多種多様で、定まった形はありません。厳密な定義は特にないが、2 mm 程度までの厚みのものを薄板バネと呼ぶことが多いです。 主に小型機器で用いられます。
薄板バネとしては、曲げ形状を利用して、バネ特性を出すものが多く、加工後に適正な熱処理を施し、製品によってはめっきや化成皮膜処理をして使用されます。製造は、プレス機械やフォーミングマシンを使って行われています。作業内容から見ると、打抜加工、曲げ加工が
ほとんどです。
トーションバー
棒状のバネになります。棒の一端を固定して他端をねじりを加え、棒をねじり変形させることでバネ作用を利用するものです。板バネよりも強度が高いのが特徴です。多くはレバーと組み合わせて使用します。棒の断面形状は、ねじりに対して効率のよい円形が一般的です。
吸収エネルギー効率が高く、形状が簡単(小型・軽量)なため、実際のバネ特性が計算と一致しやすいです。その一方、材料を特選する必要があり、また端部の加工や、取付金具に費用がかかる欠点もあります。
主な用途は、自動車の懸架バネや、空気バネを使用した車両のスタビライザなどに使用されています。スタビライザは、棒をU形に曲げて
トーションバーと腕を一体にし、本体のねじり変形と、腕部の曲げ変形によるバネ作用を利用するものです。自動車の車体のロール抑制などに使われています。
渦巻きバネ
薄鋼板や帯鋼などの線材(バネ材)を渦巻き状に巻いたバネです。バネ材に弾性エネルギーを蓄積したり、蓄積した力を反発させたりして
使用します。狭いスペースに多くのエネルギーを蓄えることができ、製作が容易などの利点があります。渦巻きバネは、大きく「接触形」と「非接触形」に分けられます。
接触形渦巻バネは、隣接する板同士が接触するものです。この接触形渦巻きバネのことを「ぜんまい」と呼ぶこともあります。バネを
巻き上げていくとき、密着していた板が解けていくため、バネ定数が変化していく特性を持ちます。板同士が密着しているため、そこで摩擦が発生してヒステリシスを持つバネ特性となります。接触型渦巻バネは、自動車のシートベルト巻取り装置や家電製品のコード巻取り装置、
時計、玩具の動力源などに使用されています。
非接触形渦巻バネは、隣接する板同士が離れたものです。板間摩擦がないため、バネ特性を比較的正確に計算できる長所があります。
一方で渦巻バネを巻ける回数は少ないという点があります。非接触型渦巻バネは自動車のシートリクライニング装置や各種メーター、さらに
可変バルブタイミング機構などに使用されています。
竹の子バネ
長方形断面の板状の素材を円錐状に巻いたバネです。分類としては、圧縮コイルバネの一種である円すいコイルバネに相当し、
円すいコイルバネの素線が板に変わったものといえます。たわみが一定以上増すとバネ定数が次第に増す非線形特性があり、なおかつ
比較的小さな形状で大きな荷重を受けることができます。丸線材の円すいバネに比較して、容積当りのエネルギー蓄積量は多いが、
焼入れが困難なことと、ショットピーニングができないなどの欠点もあるため、特殊な用途以外あまり多くは用いられていません。
皿バネ
バネ材を浅いお皿のような円錐にして、中心に穴を空けたものを皿バネといいます。狭く小さなスペースで大きな荷重を受けることが
できます。単体で使うよりも、何枚も重ねて使うことが多いです。重ね方には「並列組み合わせ」と「直列組み合わせ」があります。
直列組み合わせは、たわみは枚数に比例して大きくなり、並列組み合わせでは同一荷重でも枚数に比例してたわみは小さくなります。
使い方によっては押し込む力に利用する場合や、引っ張る力として利用する場合があります。その力の強さは皿バネを重ねる枚数に
比例します。自動車のクラッチやトルクリミッター、土木建築の防震装置、宇宙分野に至るまで幅広く活用されています。
非線形特性のバネであり、形状の寸法比を変えることで様々なバネ特性が得られます。皿バネ同士を組み合せることにより、さらに様々な
バネ特性が得られ、全体としてのバネ高さも変えることができます。皿バネは、板厚、自由高さなどのわずかな相違により、バネ特性が大きく変化するため、荷重のばらつきを小さくおさえることが困難であり、この点が皿バネの欠点です。
輪バネ
輪バネは円すい面を持つ内輪と外輪という2種類の輪を交互に積み重ねたバネです。輪バネの軸線方向に圧縮荷重が作用すると、外輪および内輪が伸びおよび縮みを起こすと同時に、円すい面での摩擦力が作用します。このため輪バネは、小さい容積で大きなエネルギー吸収をさせることができるので、機械部品の緩衝装置などに用いられます。
線細工バネ (線材細工バネ)
線状の材料をバネ作用を得ることができるようにした部品の総称です。用途に応じて様々な形のものが作られ、特に定まった形状は
ありません。大量生産するために、薄板バネの生産に用いられるマルチフォーミングマシンによってつくられる場合もあります。少量生産の
ものは専用の治工具によりハンドワークでつくられるのが一般的です。
線細工バネ(線材細工バネ)の中でも、スナップリテーナ(だるまピンとも呼ばれます)、スナップピン(松葉ピンとも呼ばれるます)などのように、規格化され、基準寸法、許容差等が決められているものもあります。これらの線細工バネ(線材細工バネ)の多くは動的に用いられることは少なく、静的に用いられることがほとんどで、荷重が小さい範囲で使うことが多いです。したがって、荷重特性については厳密に規定されていないものが一般的です。
ファスナーバネ
バネ作用を利用した簡易締結部品の総称です。ファスナーバネのなかには、バネ座金、歯付き座金、波型座金、止め輪、スプリングピン、
スプリングナットなどが含まれ、様々な種類が存在します。これらは機械部品として、大量に生産されるため、種類、基準寸法、許容差等が
規格化されたものが多いです。
メッシュバネ
細い線材を布生地のように編んだバネです。「メッシュスプリング」とも呼びます。編み方はメリヤス編みとなっており、編み込んで帯状
とした材料を円筒状やドーナツ形にして使われます。クッション材として使われ、バネ特性が大きなヒステリシスを持っていることから
振動吸収の性能が高いです。